『ミクロの決死圏』が現実になる日が待ち遠しい
インフルエンザウイルスより小さいナノマシンに薬剤を入れて血中に放ち、がん細胞をピンポイントで攻撃するという「ナノ医療」の噂を聞いたのは、2015年のこと。ミクロサイズになって体の内側から脳出血の治療をする'66年製作のSF映画『ミクロの決死圏』みたいじゃない!? と興奮した覚えがあります。
とはいえ、当時はまだ開発段階で、乳がんに関しては臨床試験が進んでいて2年後の実用化を目指しているという話でしたが、一部のワイドショーや新聞が取り上げる以外にさほど話題にはなっておらず。何よりも周囲の医師たちが全く反応していなかったので、遠い未来の医療というイメージでした。
ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)の研究についてはその後も注目していましたが、2016年には母が胆管がんになり、2017年には父がすい臓がんで他界。ナノ医療に対する期待は少しずつ薄れていきました。
考えてみれば、極小マシンが体内を駆け巡って病気を早期発見したり治したり、なんてことが実現すれば、医師が必要なくなってしまう。一部の製薬会社は淘汰され、社会のパワーバランスが崩れてしまう可能性もあるわけです。そう簡単には申請はおりないだろうな、と諦め半分で同行を追っていたのですが…。
ついに成功したんですね。
「膵臓がんの狙い撃ちに成功」の見出しを見て、ガッツポーズをしちゃいました。
口や血管から摂取した抗がん剤は、がん細胞だけでなく正常な細胞を攻撃してしまいます。そのため、患者は絶えず副作用との闘いを強いられ、最悪の場合は感染症で命を落とすことも。でもナノ医療なら、体に悪影響のないナノマシンに入れて抗がん剤などの薬剤を患部へ届けることができる。がん細胞だけをピンポイントで狙い撃ちできるということは、体力をある程度温存したまま病気と闘えるってことですよね。
まだマウスによる動物実験の段階だそうですが、医療現場での実用化を期待せずにはいられません。おかん、それまで元気でいてね。
駅前の銀杏並木がすごいことになってました。まるで黄色いじゅうたんの上を歩いているみたい。
(鶴)